シュヴェーグラー『西洋哲学史』/岩波書店

ソクラテスの少し前の哲学者からヘーゲルまでの西洋哲学史を解説した本です。ソクラテスデカルトライプニッツ、ヒューム、カントなどのいわゆる大哲学者については相当のページ数がさかれていて、それぞれの時代の主要な思想・哲学の移り変わりなどが簡潔な文章でまとめられています。わかりやすいです。シュヴェーグラー、いい仕事してますねえ。時代時代の要点とも言うべき人物とその思想をピックアップしながら、さらのその要点をわかりやすく書いてる。と、そう書いてしまえばふーんすごいね、で終わっちゃうところなんですが、この人の場合、対象が「西洋哲学史」なんです。つまり西洋哲学のはじまりからヘーゲルまでの思想とその変遷に熟知していなければ、とうていこの書物をまとめあげるなんてことはできないですよ。この書籍の使い方としては二通りあると思います。まずひとつは「西洋哲学の歴史」を追うという目的で読むこと。もうひとつは「興味のある哲学者の思想」の要約を読むという目的で読むこと。カントの「純粋理性批判」もまたこの本のなかでは簡潔にまとめられていて、そのあまりの簡潔っぷりにちょっとした感動すら覚えました。あの巨大な思想をこんな簡単にまとめちゃっていいのかよ!みたいな。入門として読んでよし、歴史ものとして読んでよし、逆引き風に読んでよしで、古い本ながら楽しみ方がたっぷりとあります。ただ私にとって残念だったのが、この本のなかではほとんどフランスで発生した哲学啓蒙思潮に触れられていないことです。というか「当時フランスでは哲学啓蒙思潮があった」みたいな一行くらいでさらっと流されています。ベルクソンのベの字もでてきません。ベルクソンファンとしてはちょっと、あれーって感じですが西洋哲学に興味をもった人なら一冊もっているべき本、というよりも最初に読んだほうがいいのかな?という感じです。