スーザン・ソンタグ『写真論』/晶文社

スーザン・ソンタグの語り口は饒舌で、知らぬ間に深みに連れ込まれてしまう。写真は世界の薄片で、どうしようもなく薄っぺらく壊れやすいものだけれども、この世のあらゆるものは写真に撮られることが可能で、それはつまり撮影者に安心をもたらす。写真は古いほど面白い。何故か。景色はすごいスピードで変化していく。毎日その微々たる変化を目視している我々はそれに気付かない。古びた写真として過去の記録が目の前に突きつけられるとき、世界の完全性は綻び、世界はつねに変化しつづけているということを嫌でも実感せざるを得ない。