ベルクソン『創造的進化』/岩波書店

ライプニッツの本を読みながら、ちょくちょく読み込んでいた本。かなり古い文庫本であちこち擦り切れ、書き込みがいっぱいされている。400ページ級の厚めの本なのだが、なんというか、とてもさらりと読むことができた。文章が明晰でわかりやすく、丁寧に説明してくれるので読んでて気持ちがよかった。ベルクソンは哲学者としてだけでなく、美しい文章を書く文学者としても名高い、というのも頷ける。
内容に過不足がなく、回りくどくなく、直接的に問題に斬りこむ、というのがベルクソンの作品の特徴であるらしい。
この本は題名こそ『創造的進化』と、なんだかダーウィンの進化論みたいなものを扱っているのかと思ったが、そうではなく、「生命とは何か」「生命を理解するためにどのような方法論をとるべきか」「知性とは何か」「本能とは何か」「知性に頼るゆえの人間の限界とその展望」みたいなことを論じていて、その中で特に「(人間の)知性とはどういうものか」に重点がおかれている。

■本能は「なまの物質」に向かう。とくに本能を進化させた生命としては膜肢類(蜂など)が挙げられる。
■知性は「形式」を扱う。あらゆるものに「形式」を当てはめ自分に役立つ道具を作り出す。
■生命とその進化を理解するためには、どうしても目的論的な立場から論ずる必要がある。
■知性はとくに「死んだ物質」「固定されたある瞬間」を扱うことに長けている。いっぽうで生命に対する根本的に無理解が特徴である。
■持続(時間)はつねに流れつづけ、人間は同じ一瞬を再度体験することはできない。つまり変化しつづけている。
■知性は任意のある固定の瞬間を取り出して、一種の数学的な(物理的な)系を構築することができる。ただしそれは持続(時間)について考慮しない状態において可能である。