ベルクソン『物質と記憶』/白水社

哲学書を読んで感動したのは初めての経験です。ベルクソンは難しい言葉を使わず、平易な言葉と我々の常識に沿ったかたちで理論を展開しているのだけれども、そこには世界観の転換や予期しなかった発見があって新鮮な驚きに満ち溢れていました。ベルクソンはこの本で、人間が認識している、まさにこの世界とはどういうものなのかを「イマージュ」という概念を導入して構築しなおしてみせています。イマージュとは表彰と事物の中間的な存在であって、「人間が認識している物質そのもの」です。これはカント的な「人間は物そのもの自体を決して知ることができない」っていう考え方と同じなのかしら?まあいいや、とにかく「イマージュ」を認識する人間もまた「イマージュ」で構成されており、脳もまた「イマージュ」なのであります。なにかしらの「イマージュ」に接触するとそれは「知覚」であり、「知覚」はあとから「記憶」として経験しなおすことができます。さてこの「記憶」は一体どこにあるといえるのか?というのが『物質と記憶』の扱うテーマであります。すっとばして結論から言っちゃうと「記憶」は脳の中にあるとは言えないということになるのだけれど、現代の科学的な検証だとどういうことになってるんでしょうか。
とにかく一読すべきです。すごいんですよ、この本は!世界観がひっくりかえります。今見ている世界は、知覚している感覚とか記憶や感情などからなりたっているわけですが、決してそれらは我々が一般常識的に考えているようなものではない、ということをすごくわかり易く説いてくれます。なんだかベルクソンの饒舌に騙されてる気がしなくもないですが、読み終わったあとではむしろベルクソン的世界観の方が現実味を帯びてきます。現代の科学とか医学で、この哲学がどう評価されてるか気になるなあ。